三石博行(京都・奈良EU協会副理事長)
大衆化し日常化した国際化社会のなかでの国際交流運動の課題
20世紀後半から、私たちの社会では、交通機関やインターネットの発達によって、社会の国際化が急速に進み、国際交流と敢えて呼ばなくても日常的に海外の文化に接することができるようになった。このように、大衆化し日常化した国際化社会では、今までの海外の文化を紹介する国際交流のあり方が問われており、国際化社会での国際交流のあり方が検討されている。このような状況を前提に、私たちは京都・奈良EU協会を発足した。
地域という世界の一部と世界という他の地域の交流
日常化した国際化社会では、自分の住んでいる地域という世界の一部と交流している人々の住む世界という他の地域の交流が前提となる。海外の文化を学ぶ側と伝える側の立場から、両者が相互に文化を伝え合うことになる。二つの地域文化(世界の一部の)の交流は、それぞれの生活世界の人々の交流による相互の訪問活動や協同事業活動によって展開する。つまり、二つの生活の場の相互訪問活動や協同事業活動は、一つの地域の人々がもう一つの地域の人々との相互交流すること、世界の二つの異なる地域に生活基盤を持つ人々が協同で生活生産活動を行うことを意味する。
生活の場からはじまる国際交流
生活の場からの相互交流型の国際交流活動は、文化、経済活動を含むすべての生活活動を意味する。これまでの国際交流活動が文化交流活動に限定されていた枠を超える可能性が生まれる。その意味で、これからの国際交流活動は、文化交流が余暇活動や教育活動に限定されず、経済活動や社会活動に発展する可能性を持つ。生活の場から創出されたあらゆる形態、多様な活動のスタイルが、相互交流型の国際交流のあり方になる。生活の場という多種多様な人々の特殊性と共通性から生み出される文化活動の可能性がそこで展開されることになる。
京都・奈良EU協会を発足するにあたって、@生活の場から始まる文化事業、A地域社会に根ざした交流活動、B自己実現型の交流事業の3つの国際交流活動の課題を考えた。
持続可能な参加型国際文化事業
関西地方の文化の特殊性を前提にして私たちが、EU諸国やその周辺国の地域社会の人々と、地理的距離を越えて行き交い、また文化的差異を超えて理解し合うことが京都・奈良EU協会の活動の目的である。そして、協会会員の主体的な文化事業への参画や構築によって、多様な活動が生み出される。これが協会の活性となる。この協会は、会員の活動の意欲、参画、活動構築過程を尊重し、「会員による会員のための組織」である。つまり、協会は、会員の自由で多様な活動の場を保証する。また、地域社会の人々の生活経済を豊かにし、生活環境を快適にするものとして位置づけ、自分達の生活文化を豊かにする社会文化機能として活用することが、私たちの目指す国際文化交流事業である。
日常化する国際化社会の中で、京都・奈良EU協会は、国際化社会に対応しようとする地域人々、商店やレストラン、企業家などの経済活動を支援できる文化事業を模索する。この新たな試みを実現するために、京都・奈良EU協会をNPO(特定非営利活動法人)にしたのである。
新たな国際交流の文化事業
以上の視点から、協会はこれまで奈良を中心に多くの事業を起こしてきた。そして、今後も精力的に以下に示す事業を企画したい。
@新しい文化経済事業を起こし、経済生活の場、事業の創造を目指す人々をサポートする活動。
A豊かな経験やスキルを持つ人々が、若い世代の文化経済活動を支援し援助する。
B学生のインターンシップの受け入れと留学生の支援。
CEU諸国とその周辺国の地域社会文化を学ぶ関西地方の学生や社会人が参加する研修の企画。
D市民が生活の場で日常的に接し理解し合える国際文化交流活動。
三石氏の文章について詳しくはブログ参照
http://mitsuishi.blogspot.com
http://mitsuishi.blogspot.com/2009/06/blog-post.html